西東京市多文化共生センター
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     NIMIC通信 No.29(2008年9月)
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┏ [10] キーワードを読む
    「多文化共生」について理解を深めるために(24)
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 NIMIC設立の理念の中で大きなウェートを占める「多文化共生」。この言葉をキーワードに、2006年9月号から多文化共生に関わる本の紹介を始めました。
 24回目の今回は、イランの人々の喜怒哀楽、生の感情が感じられて、「同じ人間なんだ」と強く共感できる本をご紹介します。

『ペルセポリス Ⅰ ―イランの少女マルジ―』  2005年6月 1,400円
『ペルセポリス Ⅱ ―マルジ、故郷に帰る―』  2005年6月 1,500円
        マルジャン・サトラピ著 園田恵子訳 バジリコ 

 著者は1969年生れのイラン女性、現在はパリに住み、イラストレーター・作家として活躍している。原書はフランス語で、一見ちびまるこちゃん風マンガの形式なのですが、児童書ではありません。
 Ⅰ巻はテヘランで育った著者の少女時代の回想記です。イラン人の家庭生活が描かれた本としても珍しいですが、それを取り巻く社会環境もすごい。パーレビ王政の時代、イスラム革命がおき社会が大きく変わり始め、イラン・イラク戦争が始まり、やがてスカッドミサイルが飛んで来るようになり・・・。そんな中でも反抗期のマルジ、学校の先生に反抗して退学になり、単身オーストリアへ留学する所(14才)で終わる。
 Ⅱ巻はマルジの4年間のオーストリア留学生活からはじまる。友情・恋など青春の悩みと孤独に加えて、混迷するイランへ向けられる欧州社会の冷たい視線・・・アイデンティティを見失ってどん底の状態で帰郷する。が、やがて立ち直り、テヘランの大学で美術を学び、結婚・離婚をへて、再度美術の勉強のためフランスへ旅立つ(24才)まで。
 この本は、非常に明確な階層社会であるイランの、教養あるお金持ち家庭の話です。が、オリンピックにも登場してこないイスラム女性本人からのメッセージに接したのは、私には初めての体験であり、新鮮でした。
もっともっと様々な考え方や感じ方が発信されてくるとおもしろいことでしょう。
 どん底のマルジがテヘランでテレビを見ると、日本のドラマ「おしん」が・・・
思わぬところで日本も登場。

 著者の監督によりアニメ映画化されて、2007年度欧米各地の映画祭でノミネートされ、話題になりました。2008年10月にはDVDが発売されます。
  (NIMIC会員 根本 百合)

 
 
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